白うさぎの読書ブログ

読書好きが個人的に面白いと思った本や学び、社会への疑問などについてのんびりと書いている雑記帳です

こぼれだしたら

今週のお題「こぼしたもの」

 

こぼれる、と聞くと、コーヒーこぼした、とか水こぼした、とか

液体を想像するけど、私がこぼしたのは感情。

これは20代前半と呼べる頃の私の、遠い遠い記憶のお話。

 

あの頃の私は、言いようのない不安と、頑張らなくてはという気持ちがぐちゃぐちゃに混ざって、でも弱音を吐ける場所もあまりなく、強がって生きていた。

 

下を向いて、そのまま蹲りそうな時でも、つんと顔を前に向けて、

颯爽と歩いている、というふりをしていた。

 

まだ、若かったから、気合でいろんなことがどうにかなった。

 

でも、いったん気を抜くと、なんだかアメーバのように溶けて戻れなくなりそうで、頑張ってる私、いろんな活動をしている私、というものに鼓舞されながら、

毎日張りつめて自分を前に進めていた。

 

でも今思うと、進めてはいなかったのかも、とも思う。

 

そんなときの失恋。

 

これが、こんなにも辛いものだとは知らなかった。

世の中で、たった独りぼっちだと、自分を必要としてくれる人はもう誰もいないんじゃないかと感じて、自分の影まで薄くなったように思えた。

 

会社では、笑っていた。弱みを見せたくなくて、また見せられる人も少なくて。

 

 

そんな日々を送っていたある日、仕事関係の野暮用で、土曜日に外出し、夕方家路につくときに、コンビニに寄った。

少し薄暗くなりつつある、けれども綺麗な夕焼けが見える頃だった。

 

辛い時に、明るい店舗に入ると、少し元気をもらえる。

だから、何気なく寄った。

 

そこで、親子とすれ違った。お父さんと、娘。

 

その瞬間、強がって見ないようにしていた自分の本当の気持ちが、大量に降ってきて、

抑えられなくなった。

 

小さなころに、夕日がきれいな日には河川敷に連れて行ってくれた父。

家族でご飯を食べている風景。

安心して、笑っていたあの頃。

私が、求めているもの。

今、感じていること。

 

こういったものが、胸にあふれてきて、強がれなくなってしまった。

 

失恋したそのときは呆然として、涙も出なかったし、

私は強いと、きっと大丈夫だと強がって、無理やり前を向こうとしていたけれど、

全然前に進めていなかったことに気付いた。

この悲しみを、寂しさを、きちんと受け止めて泣かなければ、前に進めないのだと。

 

 

次の休みには実家に帰ろう。

近くにいてくれる人を大切にしよう。

自分のほんとの気持ちに、嘘をつかないようにしよう。

 

そして、今日は思いっきり泣こう。

 

そんな風に思った。

 

あれからずいぶん時が流れたけど、

私はあの時とは全く違う場所で、違う生き方をしているけれど、

休みの日の、きれいな夕日を見ると、あの時の感情を思い出す。

 

今は一人じゃない。

けれど、だからこそ、あの時こぼれだした感情の記憶を、寂しさを、

忘れないようにしようと思っている。

 

 

お読みいただきありがとうございました^^