白うさぎの読書ブログ

読書好きが個人的に面白いと思った本や学び、社会への疑問などについてのんびりと書いている雑記帳です

つなぐということ

ずっとずっと昔からある老舗の和菓子屋さんが、コロナ禍と物価高騰などで、ついに閉店を決めたという記事を読みました。

 

ずっと昔に、祖父が始めたお店を、孫の代で閉めると決めることは、

どれほどの痛みを伴うものなのでしょうか。

 

いわゆるサラリーマンの数が、日本では多数を占めているけれど、

私が生まれ育った町は、サラリーマンよりも、家業を持っている家庭が多いような、

子供の頃は、町中に小さなお店があったり、友達がみんなどこかのお店か会社の子供みたいな、そんな町でした。

 

遅くまでお店で仕事をして、一生懸命、常に全力で戦う親たちの背中を見て育ちました。

 

今は、勤め人のほうが多いし、仕事をしている姿を見ることはあまりないかもしれません。

 

親への反発から、家業を継がないと決め、大学進学し、普通に企業に就職したり、公務員になったり。でも親がもう経営できない、という年になって、悩んだ末に会社や役所をやめ、戻ってきた人も何人も知っています。

 

一見いいお話のようですが、親の家業を継続し、健全に操業し続けるというのは、

猛獣との闘いのようで、それに敗れると、すべてを失うこととなります。

 

親が亡くなり、会社の経営を引き継いだけれど、親の代とは時代も違い、かつ客層も、先代のお客様は次第に切れていき、自分と似たような年齢層の顧客となるため、コミュニケーションスキルや街に溶け込む人間力もいるし、なによりもプライベートがありません。

 

それでも、代々続いた家業を、自分の代で終わらせることと天秤にかけたときに、先祖代々の思いや、幼い頃の記憶もあって、葛藤するのだと思います。

 

いい会社に入っていたけれど、父親が亡くなり、会社を存続させるために辞めて帰ってきて、会社を継いだけれど、かつての仕事とは畑違い、かつ時代による業界淘汰の波が押し寄せ、結局続けられなくなった人もいて、

 

親や、代々の家といった、なんというか、感情とか、肉親の情というか、

生まれ育った場所やかつて育ててくれた社員の方たちを守るために、

それまでの自分を捨て、かつ存続できずすべて失うというのは

 

とてもしんどいし、辛いことで、はたから見たら、無謀にも思えるその行動に、

すごく共感でき、かつ葛藤が理解できる私がいます。

 

 

周りから見たらなんであんな苦労を・・と思うことでも、

本人の葛藤の末に、これでよかったんだ、と思える人生なら、

もしかするとそれは、本人からしたら納得のいく人生なのかもしれません。

 

私の生まれた故郷は、もしかしたらあと10年もしたら、どこかと合併して、名前もなくなるかもしれません。

そこにあったお店も、今は大手以外ほとんどありません。

目を閉じて思い出すと、子供の頃、お祭りのようだった商店街が浮かびます。

 

一人、一人また、お店の店主のかたが亡くなっていきます。

 

人も、生活も変わっていくから、いつまでも同じではいられない。

それを十分わかったうえで、

時々、昔あったあの場所を、あのお店を、懐かしく思い出したりします。

 

 

お読みいただきありがとうございました^^