同じ本を読んでも、大人になってからと、若い学生の頃に読むのとでは違う感じ方をしたりしますよね。
親に対する気持ちなども、親が若くて元気なときと、年をとってからだと、いろいろ変わってくるものがあったりします。
今回ご紹介するのは、児童文学などを書かれている作家さんの本なのですが、大人になってから読むと、その登場人物のやさしさと、抱える葛藤にまた違う感じで心を打たれる物語です。
もちろん小中高校生にもさくっと読める温かいお話です。
「車夫」 いとうみく 文春文庫
主人公の走は17歳。父親の会社が倒産し失踪、家をでて母と暮らすも、母は強くなく、しばらくして走をおいて失踪してしまいます。鍋いっぱいのシチューを残して・・。
一人残され、生活にも困り、学費を払えなくなった走は、退学を決めます。
そんなときに所属していた陸上部のOBに誘われて「車夫」として働き始めるのですが・・・。
走の強さ、葛藤とともにその周りに生きる車夫たちやお客、所属していた陸上部顧問の先生のいろいろな思いに、心あたたまり、時には涙する気持ちのいい物語です。